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よ う こ そ
 おとぎばなし 翼の部屋
   Welcome to world of fairy tales TASQ.

        健全な青少年育成には、夢を描けるメルヘンが、

 なによりのツールです。

  通読され、あなたが面白かったら、子供にも

 読んであげて下さい。

 

   自動ヴァイオリン 1900 年初頭 (アメリカ)

 

 

音 楽  : 3

焼けこげたフルート

 

ある森の樹に、リスとフクローが一緒に住んでいました。
明るく心優しいリスは、森の人気者でした。

しかしフクローにとっては、チョコマカするリスは嫌いです。
昼間はゆっくりと、爽やかな風に身を委ね、鳥たちの澄んだ歌声で
うとうと と 微睡(まどろ)みたいのに、
リスはいつもガサガサと土を堀り、食べもしない木の実を隠し、
必要も無いのに木に登ったり降りたりと、一っ時もじっとしていないのです。

同じ樹に住む仲間だと思って、文句を言わないよう我慢しているが、
リスの無神経さには、ほとほと嫌気がさしています。

「あいつには、鳥の澄んだ歌声も、耳に入らないのかな。」
そのときフクローは、あるアイディアを思いつきました。
「そうだ。」
「オレたち鳥には、ほかの奴らに真似のできない、美声を持っているではないか。」
「みんなが集まって歌ったら、素晴らしい合唱団ができるぞ。」
「いや折角だから、森の動物たちを集めて "森の音楽会" がいいな。」

アイディアはどんどん膨らみました。

さっそく森の動物たちに、得意の楽器を持って集まるように、呼びかけました。
動物たちは、思いのほか沢山集まりました。
なかでも鳥たちは、お前はソプラノだ お前はアルトだ、と集まるとすぐ
話し合いました。

とりわけ声の美しい、鶯とカナリヤがソプラノです。
アルトはカッコー。
カッコーが南の島に帰った時は、鳩が代役と、そこまで決めました。
雉のオスは、テノールです。
バスは誰でしょう。もちろんカラスです。

こんなふうに鳥たちは層が厚いので、ワイワイ ガヤガヤ特別
盛り上がっています。

集まった動物たちの中に、フクローの嫌いな、あのリスがいました。
リスは、木のフルートを持ってきていたのです。
フクローは、リスからフルートを取り上げ、自分がそれを吹くことにしました。

リスは、どうしてフルートを取り上げられたのか、分かりません。
しかたがなく、胡桃の木で、もう一本 造ることにしました。

「ああ」 森の音楽会は、もう始まっています。
リスは、自分も早く参加したいので、夢中でフルートを作っていました。

何日も掛かって、やっとフルートができました。

この森には、一番怖い人間が入ってきます。
三日ほど前から、やはり人間が来て、
土を盛ったり沢山の木を集めたりしています。
どの動物も、人間が一番嫌いです。
だって、罠で足を折った仲間もいますし、ブルトーザーで巣穴を壊され
子供を殺された仲間もいます。
森や丘に火を点け、野焼きをすることもあります。
人間がいる時は、なるべく音をたてないようにし、音楽会も中止です。


しかし今夜は、あの人間が居なくなりました。
「よし、今夜は久しぶりに音楽会だ。」
フクローが皆に呼びかけ、動物たちが集まりました。

すると またあのリスが、新しいフルートを持って、
そこに居るではありませんか。
「なんだ、お前か。お前は、ここのメムバーには入れないんだ」
「どうしてですか。どうして私が駄目なのですか。」
「どうしてだと。お前の胸に訊いてみろ。」

フクローは、またフルートを取り上げ、意地悪にもあの人間が
造った釜の中に捨ててしまいました。

リスは自分の樹に戻って泣きました。
卑怯にも、フクローは理由も言ってくれないのです。
悔しくてくやしくて、殴ってやりたい気持ちでした。
でも力では、フクローの方がよっぽど強いのです。

遠くの方に、火の手が上がりました。
リスは、その火元に行ってみました。
やはり、怖い人間がいます。
なんと、私のフルートが入った釜に火を点け、燃やしているのです。

人間は炭を焼き終わると、中から妙な小枝を見つけました。
そんな小枝の炭は、売れる大きさではないので、太い炭だけ集めて
持ち帰りました。

人間が居なくなったので、リスはそっと近づいてみました。

ありました。
真っ黒く、コチンコチンになったあのフルートが捨てられていました。
「かわいそうに。すっかり小さくなって。」

リスは泥を払い、やさしくキスをしてあげました。
唄口にも息を吹き込んであげました。
するとどうでしょう。
空高く歌うヒバリのように、とても澄んだ音色が、森のあちこちに
こだましました。

「これは、ピッコロだわ。」
でも森の音楽会に行く勇気はありません。

今夜も森の音楽会が始まりました。
しかし リスは木陰からそっと見ているだけです。
皆があまり楽しそうにやっているので、リスも我慢ができません。
思わず 「そうっと」 吹いてみました。

耳ざとくフクローは、それをすぐ聞きつけました。
「オーイ、そこに居るのは誰だい。こっちに来て仲間と一緒にやらないかい。」
リスはそう言われても行きません。ほかの動物たちも、
「君のピッコロは、特別 美しかったよ。一緒にやろうよ。」 と口々に言います。

フクローは木の後に回ってみました。
そこには、同じ樹に住む、あのリスがいるではありませんか。
「君かい。今のピッコロは。」
リスが手にしていたのは、自分が取り上げ捨てた、あのフルートだと
すぐ分かりました。
しかし真っ黒になって、見る影もありません。

怯えている リスを見て、
「どうだい、よかったら皆と一緒にやってみないかい。」と、
誘いました。

それから人間のいない日には、いつも楽しそうな笑い声が、
森の中に 弾んでいました。

もちろん、あの澄んだピッコロの音も。

fine

 1998年8月15日 以降、森の動物の間では、カーボン(炭)製の木管楽器が
 主流になりました。
 



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点描画  工藤 優飛(中2)

 

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