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よ う こ そ
 おとぎばなし 翼の部屋
   Welcome to world of fairy tales TASQ.

        健全な青少年育成には、夢を描けるメルヘンが、

 なによりのツールです。

  通読され、あなたが面白かったら、子供にも

 読んであげて下さい。

 

   自動ヴァイオリン 1900 年初頭 (アメリカ)

 

 

童 話  :4

鳥になりたかった魚

 

「ぼくの生まれた所は、光り輝く海の楽園」
初めは、そう固く信じ込んでいました。
でも生まれた時から、いや タマゴの時から危険がいっぱい。
いろいろな罠が仕掛けられており、どっちを向いても安心できる所なんてありません。

一緒に生まれた兄弟たちは、死んだり食べられたりして、みるみる数を少なくして行きます。
「いやだ!いやだ! ! もうこんな所から逃げ出したい。」
そんな気持ちが日増しに強くなり、逃げることだけを考えていました。

ある日、ぼく達を食べている大きな魚が、もっと大きな魚に食べられているのを見ました。
「あれ! 大きな魚もたべられるのか?」
ぼくは少し安心するとともに、自分のことも考えられるようになりました。
「ぼくは小さいと思っていたけれど、ぼくより小さい生き物がいて、
それを餌にして生きていたんだ。」

自分のしていることは普通だと思っていたのに、小さな生き物に申しわけなくて、
それはそれはショックでした。
「でも、自分が食べられるのは、やっぱり怖い。」

今日も、大きな魚の群れがやってきて、ぼく達は上へ上へと逃げるしかありません。
すると、今度は空からチャンスとばかり、カモメが突っ込んできます。
両方から挟まれ、ぼく達兄弟はどうして良いかわかりません。
群れはバラバラになり、たった一人で夢中で逃げました。

もうすっかり疲れて、海草の陰にかくれていました。
「鳥はいいな。カモメはいいな。どこにも行けて、追いかけられることも、
死ぬこともないんだ。」
「ぼくも きっと鳥になるぞ!!。」

ふと見ると、別の魚がやはり隠れていました。
その魚は、胸鰭が大きく長く、それがとても邪魔そうでした。

「おい、坊や、お前も迷子かい。」
その魚が話しかけてきました。
「うん、怖かった。もう死ぬかと思ったよ。」
「そうだな。でもお前にはツキがあるんだ。そのツキを大切にしな。
お前には分からないと思うが、生まれただけで、大変なツキなんだ。」

「わからないよ。もっと教えて。」
「命は大切にしなければいけないんだ。生まれるチャンスがあったのに、
生まれられない奴もいて、大変な競争を勝ち抜いて一等にならなければ
お前はこの世に居ないんだ。」
「ぼくは一等だったの。」
「そうだよ。まあー ツキも無ければ駄目だが。」

「ふうーん、ぼくは魚があまりにも惨めだから、鳥になりたかったんだよ。」
「どうしてだ。」
「だって、鳥になれば自由で、いつもいつも逃げ回らなくても良いんでしょ。」
「魚だって自由さ。お前は鳥の真似をしようと言うのかい。」
「真似かも知らないけれと゜、ぼくは絶対 鳥になるんだ。」
「あはは、馬鹿だな。真似をしたのは鳥の方だ。
魚は太古の昔から、脊椎(骨)のある動物として、大先輩なんだ。
その頃の地球には、鳥はまだ居なかったのだよ。」
「でも、魚は空を飛べないでしょ。」
「飛べるさ。坊や着いてきな。」

そう言うと、その魚は海面までいっきに泳いでいきました。
小さな水飛沫(みずしぶき)を上げ、スーッと消えてしまいました。
「おーい こっちだ。」
おじさんは、遥か向こうで呼んでいます。
「おじさん飛んだの。すごい すごい。」

「じゃー、坊や元気でな。」
そう言うと、おじさんは行ってしまいました。
おじさんの、邪魔そうな長い胸鰭の謎が解けました。

ぼくは また一人ぼっちです。
でも幸いにして、仲間の群れを見つけました。
群れに加わり、これで一安心です。

しかしある日、ぼくにも突然の死がやってきました。
ぼく達は、群れでいる時、隣の魚と ある間を開けて泳いでいます。
ですから、隣どうしがぶつかる事なんてありません。
でも、今は何だかおかしいのです。
隣どうしが狭くて、ぶつかりそうです。
いや、もう身動きが出来ないほど、一緒にまとめられています。

それは 全く一瞬の出来事でした。
気が付いたら、みんな吊り上げられていて、息をしようにも
空気に溺れるだけです。

閉じていた網の底が開いて、船底に向かってザーッと放り込まれました。
ぼくは外側に近かったので、貯蔵箱の淵にはじきとばされ、甲板に落ちました。
ぼくに出来ることは、バタバタ もがくだけです。
もう夢中で、痛いも怖いもありません。

人間達は、こぼれた ぼくなどに目をくれず、せわしなく働いています。
船には、雨水が溜まらないように、水抜きの小窓があります。
ぼくは運良くその小窓から、海に戻ることができました。

船底に入れられた仲間はどうしたのでしょう。
どこか水族館にでも行って、元気に泳いでいるのでしょうか。
とにかく、仲間には二度と会うことはありませんでした。

ぼくは故郷に帰ることにしました。
故郷には、めっきり少なくなった仲間が泳いでいました。
そこでぼくも、彼女を見つけました。

ぼく達は、たくさん子供を生みました。
でもみんな食べられて、結局 親の数より増えられないことを知りました。
自由で安心して暮らせるカモメも、いつも数は同じです。
地球の大先輩な どの魚も、数が増えすぎているわけでありません。
海の中は、いろいろな生物でいっぱいですが、特別 増えている種はなさそうです。

みんなギリギリで生きているのですね。
「命を大切に」
平凡ですが、重い言葉です。


                                                                2004.6.15

 


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点描画  工藤 優飛(中2)

 

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