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よ う こ そ
 おとぎばなし 翼の部屋
   Welcome to world of fairy tales TASQ.

        健全な青少年育成には、夢を描けるメルヘンが、

 なによりのツールです。

  通読され、あなたが面白かったら、子供にも

 読んであげて下さい。

 

   自動ヴァイオリン 1900 年初頭 (アメリカ)

 

 

道徳 1

弟と二人で

 

 ぼくには、五才の弟がいる。
あいつはじつに憎たらしい。
ぼくが苦労して造ったラジコンをバラバラにしたり、大事にしている
物を、どこかになくしてしまうんだもの。
 きのうだって、学校から帰ると、ぼくの机の上に置いたミニ四駆の部品が
どこを捜しても一個なくなっている。
力ではボクが勝つんだけれど、そんなときには本気で殴っちゃうんだ。
 夜は夜で、ボクの毛布と決まっているものを、あいつは
ちゃっかり被って寝てしまう。
取り返そうと思ったら、お母さんが「そのまま掛けておいてあげなさい」って
言うから、結局ちがう毛布で寝ちゃうことになるんだ。
お母さんは、弟ばっかり味方するんだから。

きょう学校から帰ったら、弟が留守番をしていた。
「お母さんはどこ」と聞いたら、
「昼寝から覚めたら、お母さんはいなかったよ」といっていた。

 おやつに、おまんじゅうを用意してあったけれど、何だか変だ。
二つお皿があって、一つは空になっている。
それは弟が食べたんだろうけれど、もう一つのお皿には、
一個だけまんじゅうが乗っている。
お母さんは、いつもならこういうとき、たいてい二個づつくれるんだ。
弟も、何だかそわそわして落ち着かない。
 「おい! おまえ、お兄ちゃんの分一つ食べたろ。」
あまりのけんまくに、弟は「うん」とうなずいた。
 「どうして食べた。人の物を盗っちゃいけないって知っているだろ。」
「だって、おなか空いたんだもの。」
 「おなかが空いたからって、人のもの食べていいのか、泥棒だぞ。」
まったくもう、いつもこれなんだから。

 ぼくは、いらいらしながら、きょうの宿題を始めた。
宿題がちょうど終わったころ、友達が迎えにきた。
ぼくたちは、公園でサッカーをやって遊んだ。
弟も一緒について来て見ていたが、少しして先に帰った。

 六時になって、サッカーにも飽きたから家に帰ると、
弟はテレビ(テレビジョン)を観ていたが、お母さんは帰っていなかった。
テレビを観ながら七時まで待っても、お母さんは帰ってこない。
弟はお腹を空かし、勝手に冷蔵庫から牛乳パックを出し、
口のみをしている。

 考えてみたら、ぼくたち二人は昼から何も食べていない。
学校は土曜日で給食はなかったし、弟は昼寝からさめてあの饅頭だけだ。
 「お母さんおそいなぁ」
テレビをつけっぱなしで、弟と二人で待っているけれど。
 「お母さんどうしたかなぁ」
弟はテレビを観ながら寝てしまった。
 「もう八時なのになぁ」
ぼくは、だんだんと心配になってきた。

時々家の外に出てみた。
辺りはすっかり暗くなって、チカチカする星が、すぐ目の前にあるように
低く広がっていた。
「きょうは土曜日だから、お父さんだってもう帰って来てもいいんだがなぁ」
 いつもなら、なにも考えたり感じたりしなかったぼくの家も、夜こうして
外からみると、キラキラする星やうす黒く影をつくる樹木と、
何も変わらないただの大きな箱なんだなぁ。
これまで夜そとに出たことはあまりなかったし、お母さんたちと、神社の
祭りに行ったときなどの夜は、とっても楽しくうれしかったんけれど。
「お母さんどこに行ったのかなぁ。お父さんまだかなぁ。」

 ぼくはお母さんを捜しに行こうと思って少し歩きかけた。
なんとなく北の方へ行くと見つかるような気がしたけれど、
やっぱりどこへ行って良いかわからなかった。

 家に戻って、弟の寝顔をみていると、明日からのことが
だんだん心配になってきた。
もう十時も過ぎているし。
 「ぼくどうしたらよいかなぁ」
なんだか弟が急に可哀想になって、ぼくの毛布を掛けてやった。
 「おまえにはお前なりに、お兄ちゃんには分からない欲しいものや
やりたいことがあったんだねぇ。だけどお兄ちゃんはいつもそれを
じゃましていたね。明日からは、お兄ちゃんも少しはガマンして、
お前をきつく叱ったりしないからね。」
十一時を過ぎたのは覚えているけれど、ぼくも
いつの間にかねむってしまった。

 次ぎの朝、目がさめても、お父さんもお母さんも帰っていなかった。
だけれど、夜の闇がすっかり消え、周囲の明るさのように
ぼくも少しは元気が出てきた。
それにしても腹はペコペコだ。インスタントラーメンなら
ぼくにも作れるので、二人分作って弟と食べた。
 きょうは日曜日だし、心配してもしょうがないので、弟を連れて遊びに出掛けた。
公園に行ってみると、犬を散歩させ、一緒に走っている人。
ブランコやすべり台で遊ぶ近所の子供。
ちょっと降りてきて、またせわしなく飛び立つすずめ。
そよ風に、静かに揺れる立ち木など、それはいつも見ている景色と
全く変わりがないのだけれど、今日はそれが不思議で不思議でたまらない。

 ときどき家に帰ってみたが、両親ともいなかった。
夕方、まただんだん心配になってきた頃、お父さんが
お土産を持って帰ってきた。
なぁんだ。お父さんは土曜・日曜とかけてゴルフ場に行っていたんだって。
「お母さんはどうした」というから、
「きのうからいないよ」というと、
「そうか、それは寂しかったな。それにしてもお母さんは、
出掛けるなら 出掛けるなりに電話ぐらいよこせば良いのに。」と
ぶつぶつ言っています。
「お前たち腹が減っただろう。よし、レストランへ行こう。」 

レストランの帰り道、きのうの事をすっかり忘れていたぼくも、
誰も居ないぼくの家の前に着くと、きのうの不安と哀しみを思い出した。
そして、弟と二人仲良くお父さんの布団にもぐりこんだ。

 

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点描画  工藤 優飛(中2)