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よ う こ そ
 おとぎばなし 翼の部屋
   Welcome to world of fairy tales TASQ.

        健全な青少年育成には、夢を描けるメルヘンが、

 なによりのツールです。

  通読され、あなたが面白かったら、子供にも

 読んであげて下さい。

 

   自動ヴァイオリン 1900 年初頭 (アメリカ)

 

 

道徳 2

親切はいやだ

 

 きょう学校の道徳の時間に、親切についてみんなで話し合った。
親切にすることは、みんなが気持ちがいいし、
とても大切なことだというけれど、ぼくは親切が嫌いだ。
どうしてかはうまく言えないけれど、何か物を貰ったりするのも嫌いだ。
 理化の時間に、水に住む動物について勉強をした。
ぼくは昆虫やざりがになどが好きだから、理化の時間は大好きだ。
 学校の帰り道、いさお君と公園にある池を見てから、家に帰ることにした。
池には、石が敷いてあって、それが飛び石になっている。
いさお君とふざけっこをして、池の廻りや、飛び石を
跳ねて追いかけっこをしたり、池の中をのぞいたり、
棒を石の間に入れて動物をさがしたりして夢中で遊んだ。
 ぼくもいさお君も、靴は水でぐしょぐしょになっていた。
だから、今度は靴のまま池に入って、おたまじゃくしやざりがにを
追いかけて、つかまえたのは、空き缶に入れておいた。
池の泥が舞い上がって、中がすっかり見えなくなった。
ぼくたちは、こんどは水を掛け合った。いさお君を見ると、
池の中で泳いでいる。
そしてもう顔から足まで泥だらけ、まるで泥人形のようで、
水の垂れたところが筋になって、しましま人間の出来あがりだ。
 いさお君だけで゜なく、ぼくも同じだった。何か心配になってきて、
家に帰るのが怖かったけれど、心配になるとかえって家に帰りたかった。

 ぼくが玄関を入るとき、「ただいま」と小さな声で言った。
お母さんが中から、「お帰り、おそかったのね、どこえ行っていたの。」
といって出てきた。
きっと相当あきれたのでしょう。叱ることも忘れて、
「入っちゃだめよ」というと、お風呂から水を汲んできて、
いきなり頭からザーっと外でかけた。
そして、「ランドセルはどうしたの」と言われ、「いけない」とぼくは思った。
「公園の池の所にあるよ」と言ったが、
本当はいつどこに置いたか覚えていない。
お母さんは、お風呂に火をつけると、ぼくの手を引き池まで行った。
ランドセルは、大きな石の上に置いてあり、少しも汚れていなかった。
 お母さんは、ぼくの洋服をぜんぶ脱がせ、タオルでぼくの体を拭いた。
だけどぼくって、こういうのが嫌いなんだ。ぼくは自分で何でもやりたい
と思っているのに、お母さんはさっさとぼくの世話をやくのだもの。
 お母さんの親切は嫌いだな。何でも忙しくて、「はやくはやく」って言うし、
ぼくはぼくの計算でゆっくりやっていると、すぐ手をだしたり
ガミガミ言ったりするんだもの。
 先生は、人に親切にしなさいというけれど、ぼくは違うと思うな。
ある日、目の悪い人が杖で一人で道をさがし歩いているから、
「手をひいてあげたいな」と思ったけれど、なんだかはずかしくて
なかなか声を掛けられなかった。
だけどやっぱり勇気を出して、「おじさん、ぼく連れて行ってあげます。」って
言ったんだ。
そうしたらおじさん、「ぼく、ありがとう。いいこだね。でも
おじさん一人で歩けるからいいんだよ。」と断られてしまった。
 ぼくは顔が真っ赤になって、どうして良いのか分からなくなった。
でも、そのおじさんの気持ちぼくと同じだから、なんとなくそれがわかるんだ。
 お風呂に入って、体がぽかぽかで、すっかり気持ちが良くなった。
裸でいるのはとっても気持ちがいいのに、「風邪をひきますよ」といって
すぐにパジャマを着せてしまった。
「あぁ いやだいやだ。お母さんの親切は迷惑だなぁ」 
次ぎの日 学校から帰るとき、顔だけが熱いのに体が寒くて、
そして目も良く見えなくなった。
家に着くと、お母さんがさっとぼくの額に手を当て、「まぁすごい熱」
というと、お母さんのおお急がしが始まった。
 布団を敷き、ぼくをパジャマに着替えさせ、すぐにぼくを寝かせた。
窓をぜんぶ閉め、部屋を暖めるためストーブをつけ、
そして蒸気を出すために金だらいも乗せた。
氷枕も作り、頭も冷やしてくれた。その速いことはやいこと。
「あっ」という間にやってしまい、その間のお母さんのおせっかいが
ちっとも「いや」だと思わなかった。
 風邪薬を飲ませると、「買い物に行って来るから、しずかに寝ていなさい。」
といって出掛けてしまった。
 お母さんが出掛けると、ぼくは堪らなく寂しくなった。
だって、もうお母さんが帰ってこないような気がしていたから。
布団をいっぱい掛けても、寒くてさむくて眠られない。
 いつ眠ったのかな。汗をびっしょりかいて、ぼくが寝覚めた。
お母さんはぼくの枕もとに座っていた。ぼくの体の汗を拭き、
新しいパジャマにまた着替えさせた。
不思議にも、このお母さんのおせっかいが、いやではなかった。
いやそれどころか、さっきからお母さんがやってくれた事ぜんぶが
とても嬉しかった。
 お母さんは、「りんごの新しいのを買ってきたから、ジュースに
しておいたからね。」といって、スプーンで飲ませてくれた。
「あぁおいしい!!」 紙のパックで売っているりんごジュースは
そんなに好きじゃなかったけれど、お母さんがすって絞ったジュースが
こんなにおいしてなんて。
 次ぎの日の朝、少し元気になったが、まだ体がだるいので学校は休んだ。
 その次ぎの日は、すっかり元気になったが、もう一日休んだ。
昼は病気だったことも忘れ、家の中をはしゃぎまわっていたが、
夜 布団の中で、ふと「親切の授業」のことを思い出した。
そして、「親切ってむずかしいな」 と思った。

 

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点描画  工藤 優飛(中2)